ディスカバリーとスタートレックの著作権

ディスカバリースタートレック著作権

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TrekMovie.comの記事‘Star Trek: Discovery’ Writers Talk Captain Pike, Klingons Having Two ‘Organs’が興味深い内容だった。クリンゴンは臓器が全部2個あるからナニも2個ある、とか作り手のしょうもない裏話が好きな人はぜひ。

trekmovie.com

この記事によると権利が異なるスタートレック映画の利用は一切できなかったそうだ。スタートレックの権利元について理解してない人が多そうなので整理しておく。ガンダムの権利が富野監督ではなくサンライズにあるように、スタートレックの権利もロッデンベリーではなく映像制作会社のものだ。

スタートレックの制作会社は企業買収・合併・分割で何度も変わっており、やや複雑な状況だ。順番に
デジル・プロ
パラマウント・テレビジョン
CBSパラマウント・テレビジョン
CBS(今ここ)
と変化してきた。かつてはTVも映画もパラマウントで作られていたため、パラマウントが一元管理していた。なので今でも日本ではスタートレックパラマウントというイメージの人が多いようだ。

しかし、バイアコムパラマウントCBSを買収、合併させてCBSパラマウント・テレビジョンを作ると、その新会社がスタートレックの権利を引き継いだ。ところが合併の効果が上がらず再分割が決まる。その際にCBSスタートレックの権利を継承し、パラマウントには映画の権利のみが残された。

こんな経緯で2018年現在、スタートレックTVシリーズCBSのものだが、映画シリーズはパラマウントのものという面倒くさい状況にある。なおスタートレックの原点はTVであり、映画は派生作品(二次著作物)扱い。オリジナルのTVシリーズの権利を引き継いだCBSが元締めだ。

とはいえ、TVと映画の権利を別々の会社が持つと、TVに映画のキャラを登場させるといったクロスオーバーは困難になる。二次著作物だからといって原著作権者が勝手に使えないのは模型雑誌の連載だったガンダム・センチネルがトラブったりしているのを見ればなんとなく分かると思う。

こうした事情をふまえて、ふと思ったんだけど、ディスカバリーのエイリアンの中で、クリンゴンだけ外見(あと宇宙船)が以前と大きく違うのって、CBSが映画のデザイン(TNG以降のクリンゴンは映画1作目のデザインがベースだよね)を使えなかったせいなんじゃ……

スタートレック:ディスカバリー面白かった!

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スタートレックディスカバリー第1シーズンを見終わる。実に面白かった。こんなに次週が待ち遠しいと感じたのは、新スタートレック以来かな。未見のスタートレックファンはぜひ見て欲しいし、ファンでない人も楽しめる作りだった気がする(ファンは過去作の小ネタで2倍楽しめる)

 

当たり障りのない賞賛だけで終わるのも何なので思ったことをつらつら書くと、ディスカバリーは意外とスタートレックエンタープライズに似た部分が多かったように思う。どちらも宇宙大作戦より過去が舞台で、既存の作品で確立されたイメージを覆す、ファンになるほど違和感の強い描写とか。

 

エンタープライズではバルカン人の険悪な態度が、ディスカバリーでは宇宙艦隊らしくないクルーが違和感を与えたが、話が進むと理由が解明され、スタトレらしくなる。だが明暗を分けたのは展開の速さだ。ENTは4シーズンかかったが、DSCは1シーズンで問題解決。引っ張り過ぎないのがいい。

 

DSCは1話完結を捨てて1シーズンぶっ通しの連続ストーリーを成功させたのも見事だった。ブライアン・フラーの企画の勝利か。平行宇宙や過去作品のネタを大量にぶち込んだ点ではシャトナー&リーブス・スティーブンス夫妻の「暗黒皇帝カーク」といったファン向けの長編小説に近い印象すらある。

 

特に胸アツだったのは13話。サルーが決戦前に勝ち目のないシナリオなどない、とクルーを激励する場面だ。スタートレックの映画を見たファンなら「ああ、サルーもコバヤシマル試験で負けたのね」と微笑ましくもなり、頼もしくもなる。このへんのセンスは文句無しに素晴らしい。

 

余談だがシリーズ終盤はみんなバーナムのことが好き過ぎに見える。まるでメアリー・スーものを見ているような気分(汗)。ギスギス度MAXの前半に比べると、タイラーはいうに及ばず、ロルカジョージャウもサルーもサレクもみんなバーナムへの好意があからさま過ぎる。

 

ルレルが爆弾ひとつで簡単にクリンゴンを統一しちゃうのもアレだけど、そのへんは小説かコミックでフォローされるのを期待。日本語版は…たぶん難しいだろうなあ。スタートレックはロイヤルティがまじぱないことで有名。

 

ちなみにディスカバリーの制作費は1話当たり600〜850万ドルとか。そりゃ版権料も高騰しますわ。なお、その半分以上をNetflixが負担しているそうなので、しばらくは独占配信が続くと思われ。

 

Star Trek: Discovery (Original Series Soundtrack)

Star Trek: Discovery (Original Series Soundtrack)

 
Star Trek: Discovery

Star Trek: Discovery

 

 

スタートレック スターシップコレクション ガロア級戦艦

巷ではもう15号が発売されているようだが、今回は14号のガロア級戦艦の紹介をしておきたい。

カーデシアのガロア級戦艦は『新スタートレック』から『スタートレック ヴォイジャー』まで広く登場する敵メカだ。前方が大きく広がり、後方は細長い海洋生物かなにかのようなシルエットを持つガロア級。シンプルだが一目見たら忘れられない印象的なシルエットで、地味ながらメカデザインのお手本のような船である。

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付属の冊子によれば、デザインしたリック・スターンバックはアンク(エジプト十字)をモチーフにしたそうで、デザイン過程の裏話もなかなか興味深い。モデルに関しては次号予告の写真を見た段階では地雷臭がただようヤバげなノッペリ感があったが、現物を見るとそこまでヒドくない印象だ。

 

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表面のパネルラインなどの細かいディテールを彫刻ではなく塗装(印刷?)で表現しようとしている努力は評価するべきだろう。ただ結果的に下地の色と後から塗った色の違いがほとんど分からないのは残念というしかない。あと、撮影用模型が戦車模型などに見られるグラデーション塗装(ガンプラでいうところのMAX塗り)バリバリのため、色の選択は難しかったんだろうと思うが、やや濃過ぎる感じはする。


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あと一体成形できる単純な構造の船体のため、組立で曲がったりしずらいのが嬉しい(それでも曲がってるのが届いた人もいるようだが)。スターシップコレクションに限らず、最近の中国産の完成品は全般的に問題が多いので(例:AGPの大和など)、なんとかならないものだろうかとは思う。

 

良い点:実はベタ塗りではなく細かいパネルの塗り分けがある
悪い点:せっかくの塗り分けがほとんど見えない
お気に入り度(5段階):☆☆☆

 

 

 

スタートレックネットワークジャーナル vol.14,15

24世紀の理想郷と違い、毎日食うために働くしかないスタートレック好きにとっては2週に一度のスターシップコレクションが心の支え。しかし、もうひとつトレッキーとして楽しみにしている雑誌がこちらだ。


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スタートレック日本語公式サイト、STARTREK.ne.jpが毎月発行するスタートレックネットワークジャーナルだ。昨年夏のサービス開始から、かれこれ1年以上になる。最初のうちは電子版PDFのみの配布だったが、最近は紙に印刷して2カ月に一度送付してくれるようになった。正直PDFで長い文書を読むのは仕事以外勘弁して欲しい老眼なので、印刷して送ってくれるのはありがたい。

内容的にはアメリカ本国のサイトの記事の翻訳が中心ぽいので、英語が堪能なファンの人は無理に買わんでもよいかもしれない。しかし訳注や説明などがついており、英語が苦手な自分としてはこうしたスタートレックの本が毎月出るのはそれだけでありがたい。あと、写真は結構大判でネットの記事より鮮明になっている。

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vol.14はラスベガスコンベンションレポートがメインの特集だった。シリーズのメイン俳優のステージが多くのファンの見所だと思うが、個人的には今年のコンベンションにハーラン・エリスンが参加というくだりに注目した。
世界の中心で愛を叫んだけもの』などのSF小説が有名なエリスンだが、実は『宇宙大作戦』のベストエピソードといわれる『危険な過去への旅』の脚本を執筆している。ところが、麻薬中毒の乗組員が過去に逃げて深刻な危機を招くという内容をロッデンベリーに大幅に書き換えられてしまい、ケンカ別れ。後には裁判沙汰にまでなり、長年スタートレックとは絶縁状態だった。まあ最近はこのエリスン版を原作したアメコミも出版されているし、当事者間の和解があったんだろう。


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vol.15はレナード・ニモイ特集(2)。レナード・ニモイのロングインタビューを翻訳掲載しており、読み応えがある。基本オフィシャルなところのインタビューなので過激なことは言っていないが、ニモイはファンを大事にする人らしく、インタビュアーの質問に誠実に答えようとしているのが伝わってくる。(いや、数カ月前のシャトナー特集のインタビューが不誠実だといいたいわけではないのよ)。印象に残ったのはJJ版の映画についての考えを聞かれたときのニモイのコメント。
「新作は、ある意味で正史を破壊した。しかし、もし平行宇宙を舞台にしなければ、新作はあらゆる意味で正史を破壊してしまっただろう」
JJ版の欠点を認めながらも、平行宇宙ものにしなければもっとひどいことになっていたという指摘は示唆に富んでいる。


良い点:毎月STARTREK.COMの記事が日本語で読める
悪い点:20ページとボリュームが少なめ
お気に入り度(5段階):☆☆☆☆

スタートレック スターシップコレクション ジェムハダー戦艦

さすがにスターシップコレクションを置いてある書店も減ってきた今日このごろ。今回はジェムハダー戦艦を紹介しておきたい。

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ジェムハダー戦艦は『スタートレック ディープ・スペース・ナイン』の後半に登場する敵メカのひとつだ。初登場時にいきなり体当たりでUSSオデッセイを沈めた戦闘機とか、鬱な結末で一度見ると忘れられないエピソード『過信』でUSSヴァリアントが対決した新型艦に比べると、ジェムハダー戦艦はあまりクローズアップされたことがなく、イマイチ印象が薄い気がする。

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デザインもパッと見、ブーメラン型というか航空機っぽく、インパクトがないと感じていたのだが、今回初めて立体を手に入れて印象が大きく変わった。左右の主翼が前向きだけではなく、下向きにもカーブがついているため、見る方向によって見え方が微妙に変わる面白いデザインになっていることに(ようやく)気づいた。

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台座に載せて360度ぐるーっと回してみると様々に表情が変わっていく、実に味のあるデザインだった。付属の冊子を読むと、A4スカイホークがアイデアのヒントになっているとのことだが、完成版にはあまり面影は感じられない。しかし、途中のデザイン画を見ると、いかにも航空機的なラインのものもあったりしてなかなか興味深い。

f:id:ykx47:20180322141216j:plain映像だけでは把握できないマイナーな宇宙船も実際に手に取っていろんな角度から眺められる、というのは模型の大きな魅力だと再確認させられた。この調子でマイナーな船もガンガンいって欲しいところだ。 良い点:模型のおかげで初めて形状を理解できた 

 

良い点:模型のおかげで初めて形状を理解できた

    冊子掲載のデザイン画も興味深い

悪い点:パーツの組立精度が低く、継ぎ目が目立つ

お気に入り度(5段階):☆☆☆☆

 

 

スタートレック スターシップコレクション サンダーチャイルド

そろそろスターシップコレクションの第14号が出るころだが、発売予定など関係なく今回はUSSサンダーチャイルドをいってみたい。

スターシップコレクション第12号のアキラ級宇宙船は映画『スタートレック ファーストコンタクト』の艦隊戦シーンでちらっと映っていた船のひとつだが、メカファンの間では結構人気が高いようだ。一時はポーラーライツからプラモデルが出る、という企画もあったほど(流れたけど)。

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エンタープライズヴォイジャー以外の連邦船は基本、主役船の引き立て役として、いわば敢えてダサくデザインされがちだ。そのため、第1船体とふたつに分かれた第2船体、左右下方に広がるワープナセルで構成されたアキラ級は登場時、スマートなシルエットが印象的だった。斜め前から見ても、斜め後ろから見ても見栄えのするデザインはよく出来ている。

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なお正面の船体登録番号の上に船の名前がないとの批判があるが、映画に登場した船にも書かれていないので、劇中の再現としてはこれが正解だと思われ。

 

 

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ちなみに劇中では戦闘シーンでちらっと出るだけなんで、設定はほとんどないに等しいはずだったのだが、スターシップコレクションの冊子を読むと、デザイナーは用途や運用方法まで考えていたことが判明。ILMのアレックス・イエーガーのインタビューによれば、アキラ級は魚雷発射管18門と第1船体を前後に貫く広大なシャトル格納庫を備えた、重雷装宇宙空母だったのだ!(汗)

 

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アキラ級は模型も珍しいアイテムだが、冊子の解説もマニアックなんで四の五の言わずに買っといたほうがいい、というのが結論。模型表面のディテールが物足りないという感想もあるが、窓は一通り印刷されてるし、劇中のCGには割と忠実だと思われる。なお、組立が粗く、パーツの継ぎ目が目立つのはいつも通り。
あと、第15号からは予約した人の定期購読分のみになるとのチラシが入っていた。

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良い点:初模型化されたこと自体がとにかく嬉しい
冊子の内容も濃いめ
悪い点:パーツの組立精度が低く、継ぎ目が目立つ
お気に入り度(5段階):☆☆☆☆

 

 

スタートレック スターシップコレクション USSリライアント

第1号のエンタープライズDの出来と第2号の劇場版エンタープライズの出来の落差が大きかったせいで、ネット上では散々な印象のスタートレック スターシップ コレクション。あと5号のエクセルシオールも出来がイマイチで『宇宙大作戦』が好きなオールド世代してはつらいところだ。しかし、第11号でようやくオールド世代も満足できる船が登場した!

 

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第11号で取り上げられたのは、『カーンの逆襲』のUSSリライアントだ。いつもと同じサイズの青い箱に透明なブリスターで固定されている。内容物もいつもと同じく本体、黒い台座、透明な支柱の3点だ。
毎号共通の青い箱のサイズで中に入る模型の大きさが決まってしまうため、エクセルシオールのように細長いものほど貧弱になり、逆にD型艦やリライアントのように横幅がある船はボリューム感が出る。

劇場版エンタープライズより一回り大きな円盤部の表面には、本体色と微妙に異なる色でアズテックパターンがプリントされており、眺めているだけでご満悦な感じ。当然、頭の中はカーンの逆襲の戦闘シーンのBGMだ。まぁ、興味のない人にはまったく理解してもらえなさそうな感覚ではある。

 

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前回、フルタの1701にガッカリ的なことを書いてしまったが、フルタのスタートレック食玩の出来のよろしくないのは第2弾(ラインナップの半分がエンタープライズだったやつ)に集中しており、第1弾は比較的出来が良かった。リライアントも第1弾に含まれており、スターシップコレクションと一緒に並べてみても悪くない感じだ。

 

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ひっくり返して裏から見ても、塗装はともかくとして、円盤部後ろ側の細かい彫刻などフルタ版の健闘が目立つ。なんかリライアントの模型って「アタリ」が多いよなあと改めて思ったり。

 

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出来の良いリライアントと絡めると不評の劇場版エンタープライズもなんだかそれなりに見えてくるのが不思議(というか見慣れたのか)。この後のサンダーチャイルド、ジェムハダー戦艦も悪くない出来なんで、この調子で頑張って欲しいところである。

良い点:アズテックパターンが塗装で再現されている
    全体のプロポーションは良好
悪い点:パーツの組立精度が低く、継ぎ目が目立つ
お気に入り度(5段階):☆☆☆☆☆